もし、自分の命の終わりがすぐそこに見えたとして。
私はきっと、頑張れない。
頑張るにはここまでに気力を使いすぎて、希望を持つには難しい現実に直面しすぎてそんな未来を彼に与えたくないと思うでしょう。
ここまでの数年が神様がくれた最後のプレゼントだったのだと、ありがたく頂戴しそしてそのゴールも優しいものだと受け入れる。
パートナーの喪失はとても重いもの。
でも、私はいっぱい迷惑をかけてしまったから彼はきっと生きるのは楽になるでしょう。
そんな私ですらめいっぱい愛してくれた君だからきっと深く悲しむだろうけど、そんな君が出来るだけ困らないように生活の基盤はしっかり作るようにずっと心掛けている。
私は、何も残せない。
病気のせいで保険にも入れず、その悲しみを癒すためのお金すら用意出来ない最低の妻で。
だからせめて、形に残らない思い出や愛をめいっぱい今この瞬間も詰め込んでまた立ち直れるまでの栄養にしてもらいましょう。
でもきっと立場が逆なら私は発狂して、何がなんでも治療をしてもらうだろうからこれはとても独りよがりなのだけれど。
君はきっと私のことを想って、時間をかけて泣きながら頷いてくれるでしょう。
その時だけは優しさに甘えさせて欲しい。
そんなことを妄想してはらはらと流す涙ほど無駄なものはないのですが、如何せん勝手に出てくるものなので。
明日腫れる目に狼狽える彼が目に浮かぶ。
それもまた一興。
眠れない夜に涙を流すのは久しぶりで、これがいいことなのかどうかも分かりません。
心臓がぎゅってなるってことは心が動くってことだから、きっといい方向に持って行ける。
でも泣きながら寝ると耳がやられるので、そこだけは気をつけなければ。
例えば明日、人生が大きく変わるとしても私はこの日々をゆっくり過ごして終わりたい。
それだけの幸せがここにあるから。