そこそこ、を目指して ~うつだけど前を向きたい~

生きることを頑張れなくなってしまいました。でもぎりぎり生きています。

世界でいちばん好きな人

私の世界を愛してくれて、誰よりも優しく温かく柔軟な尊敬している人。

私は元々人間が嫌いというか苦手で、人の気持ちとか考えながら話すより楽譜や本に没頭する方が100倍楽しくて。
それでもいいと思われてたのに自分のせいになると困るとあたふたして一通り振り回されたあと、自分自身で気付いてからはどうしようも無いのだなぁと納得して以降そこに疑問を持ったことなどなくて。
そんな中で、私が初めてこの人ならば一緒に居られるかもしれないって思った人が彼だった。

もしも、幸せな人生とやらを自分が送れるとしたらきっと隣にいるのは彼なんじゃないかとぼんやりと思っていた。
でもまあ、そんなのは無理だなと知っていたので彼に最初に選ばれなかった時は妥当だなと。
一番苦しい時に隣にいて欲しかったから、本当に悲しかったけれど仕方ないことだと分かっていた。

辛いことに耐える為に、ピアノに没頭した。
人並に出来るまでに時間のかかる私が、やればやるだけ上手くなるピアノは本当に楽しくて。
貴女の音はキラキラすると言ってくれる人の声と物語のような曲を一生懸命弾き込む時間は、家族と学校の先生の下手くそという声をかき消してくれた。

芸術を深める為には、恋愛は必須。
というよりも、人生の酸い甘いが音の深みに変わるので感情の起伏が大切なのだと私は解釈してそこら辺は別に恋愛じゃなくても平気なのではと考え。
私は恋愛は知識として嗜む程度にして人生の機微は物語で十分、パートナーに望むものは安定とか必要以上の干渉が無い人であれば誰でもいいかなと思っていて。

仮に結婚という制度を利用できるとして。
多分私は子供とか仕事に夢中で、浮気されて終わりかそのまま仮面夫婦とかかなぁと。
それの何が悪いのかが分からない。

そんな私と同じくらい多分彼もあまり他人に興味が無くて。
でも私とは正反対。
ものに熱をもつことがなく、程々で身を引くことが出来るのは羨ましかった。

そんな彼と、本当にタイミングが合ってお付き合いをする流れになり。
付き合いも長いので知っていたけれど会話のテンポと趣味が被るところも多く、隣に居ても苦しくない。
最終的に選ばれることがなくても、この時間があったという事実だけで充分だった。

そして、そんな時間は私が壊れ始めたところから終わってしまった。
そんな彼に迷惑をかけたくなくて、何も言わずに全てを終わらせてどうか私のことなど忘れて欲しいと思い別れを告げた。
それなのに、彼は頷いてくれなかった。

理由を言いたくない私、理由を知りたい彼。
2、3時間の電話での話し合いの末結局私が折れて、事情を簡潔に話してもうあなたのお荷物にしかなれないからと言ってしまってもう満足したかと切ろうとして。
なんだそんなことか。

そんなこと、って。
今考えると本気でそう思った彼がいかにおめでたい頭をしていて、思い出すたびに幸せな気持ちになる。
そんなところがきっと、私は大好きなのだ。

一緒に暮らして知ったこともいっぱいある。
大概のことはそんなことで済ませてしまえる寛容さと、それでは気になる私は相容れないので気になった時点で私が口酸っぱく言うかしれっとやっとけばいい。
私の唯一の特技のピアノを本当に上手だと心から思ってくれて口に出してくれて、一緒に弾いてくれたり理解して私に教えてと素直に言えるって本当に凄いこと。

思っていたのと違ったけれど、どれも私にとってとても幸せな気付きばかり。
頑張りを認めてくれると怠けて頑張らなくなるなんてことはなくて、もっと頑張りたくなること。
上手だねって言ってもらえると、嬉しい。

昔を思い出しては泣く私を宥めて、貴女は悪くないと子守唄のように言い聞かせて。
あの時手を払わなければ、と何度でも後悔してくれる。
そしたら今一緒にいれないよと言うと、それでもいいからあの時の貴女の隣にいたかったと呟く。

あのときの私は、決して救われず報われない。
感情も出来事も絶望も、何ひとつ変わらない。
それでも、そう思う人がいてくれるというのはけっして無駄になることなんてない。

世界でいちばん好きな人。

たとえどんな形になろうとも、ずっと貴方にとって最高の幸せが降り注ぎますように。