少ししんどいことがあって、昔の私が顔を出す。
前に戻ったみたいだ。
お前なんかが幸せになれるわけないって。
好きになってもらったのも全部全部嘘なんだって。
そんな甘い考えで大学なんか受けるな。
お前のその甘さと下手くそなピアノで受かるわけない。
だからお前は落ちたんだ。
その言葉が私の中をぐわんぐわんと駆け巡る。
やめて、お願いだからそれだけは言わないで。
ピアノが、ピアノは私のことを責めないで全ての拠り所であってくれたの。
ピアノだけが、私に無償の愛を教えてくれた。
私の愛に応えてくれた。
みんなが否定してそんなくだらないことやめろって言ったのに、ピアノは私に全部くれた。
頑張る理由も、結果も賞賛も。
悔しさや哀しみ、諦めと畏怖と。
歓びと幸せと、私がここに在ることへの許可。
だから今、私は幸せなんだよ。
昔みたいには絶対ならない。
私の代わりに私のことを大切に想ってくれる人を、ピアノは私にくれたの。
私を愛して赦してくれてありがとう。
神様。
全てを奪っても、ピアノだけは残してくれてありがとう。
頑張る理由があれば、人がいれば私はどこまでも強くあれるし立っていられる。
いったりきたり、でも少しずつ前に進む。